2018年10月24日
東京都環境確保条例 2019年春改正へ
東京都環境確保条例により土壌汚染対策関連の手続きが必要となる契機
東京都環境確保条例(都民の生活と安全を確保する環境に関する条例)により、土壌汚染対策関連の手続きが必要となる契機として、以下の4つが規定されている。
- 条例第114条(土壌・地下水汚染が確認された場合)
- 工場又は指定作業場の設置者で有害物質を取り扱い、又は取り扱った者(以下、「有害物質取扱事業者」という。)が、土壌を汚染したことにより大気又は地下水を汚染し、人の健康被害が生じ、又は生じるおそれがある場合
- 条例第115条(近隣で地下水汚染が確認された場合)
- 有害物質により地下水の汚染が認められる地域に有害物質取扱事業者が存在する場合
- 条例第116条(工場等の廃止・除却するとき)
- 有害物質取扱事業者が事業を廃止し、又は主要な部分を除却する場合
- 条例第117条(3,000m2以上の敷地における土地の改変を行うとき)
- 3,000m2以上の敷地において土地の改変(土地の切り盛り、掘削その他土地の造成又は建築物その他の工作物の建設その他の行為に伴う土地の形質の変更)を行う場合
東京都環境確保条例の主な改正点
土壌汚染対策法に先駆けて平成12年に制定、平成13年に施行された東京都環境確保条例が、施行から16年が経過し、法との不整合など様々な課題が浮かび上がってきたため、法との重複の改正や不整合の整理を図ることを目的とし、平成31年に改正される見込みである。
① 条例第117条の適用除外行為の明文化及び新設
条例第117条(3,000m2以上の敷地における土地の改変:土壌汚染対策工事は含まない)の適用除外行為として認められている「通常の管理行為」が明文化され、「軽易な行為」として新たな規定が新設されている。
【通常の管理行為】
水道、下水道、ガス、電気工事に加え、用水・排水経路の設置、植栽の管理行為、既存道路補修など行為の性質から見て汚染の拡散のおそれが少なく、かつ日常性・緊急性を要する行為
【軽易な行為】
300m2未満の土地の形質変更(当該箇所において既往調査で基準超過が確認されている場合を除く)。なお、仮設の工作物や塀等の建設は、軽易な行為に当たるかどうかで適用を判断するとされている。
新設規定により調査契機に該当しないケースが増え、調査・対策費用の低減やスケジュール管理がしやすくなるなどのメリットが考えられる。
② 自主的な調査・対策の任意届出制度の新設
自主的な調査・対策について、条例第116条と同様の届出を任意で行うことが可能になる。
なお、汚染があった場合は、対策義務及びこれに係る命令、情報公開等の手続き等は、通常の規定と同等となる。
操業中の自主的な調査・対策により、時間経過による汚染範囲の拡大(=調査・対策費用の増加)の防止や将来の工場の統廃合や土地取引に先立ちスケジュール管理がしやすくなるなどのメリットが考えられる。なお、自主的な調査により土壌汚染が確認された場合でも、届出の義務はありません。
③ 土壌・地下水汚染対策の規制(法との整合・条例上の措置の追加)
土壌・地下水汚染対策について、(1)健康リスクがある場合、(2)地下水汚染が拡大するおそれの多い一定濃度を超える土壌汚染または地下水汚染がある場合、(3)それ以外の場合として規定される。
◎条例に「健康リスク」の考え方が追加され、法と同等の措置が必要となる。
◎新規定として「土壌汚染または地下水汚染の濃度による対策の有無」が追加される。
◎今まで条例で規定される措置では認められていなかった地下水汚染の拡大の防止(揚水施設・透過性地下水浄化壁の設置)や地下水モニタリングが条例上の措置に追加される。
④ 自然由来等基準不適合土壌の搬出に係る規制強化
人為的な土壌汚染の有無に関わらず、自然由来等基準不適合土壌がある場合には、これらの搬出時に「汚染拡散防止措置計画書」及び「汚染拡散防止措置完了届」の届出が必要になる。
また、自然由来等基準不適合であることの判断に係る調査、搬出及び処理の方法等について、土壌汚染対策指針で明示される予定である(内容は検討中)。
自然由来等基準不適合土壌について、現状は指導や運用による対応が行われていますが、今後は届出や行政による審査期間を踏まえたスケジュール管理や条例で規定される施行方法による工事が必要になる。
⑤ その他の改正事項
- 条例第116条の調査報告期限が「工場等の廃止の30日前」から「工場等の廃止の日から120日以内」に変更される。
- 平成31年4月施行の改正法により、新たに法第4条の対象となるケースでは、同時に条例第117条の対象となる。
- 条例で規定される調査方法が、一部、法に合わせて変更される。
- 土地所有者等への命令の発出、対策実施義務等が課される。
- 今までは情報公開請求により閲覧可能であった土壌汚染情報が、今後はインターネット等による公開の対象となる(台帳の調製・情報公開の推進)。
- 法と条例の規定が合理化され、手続きが重複する場合は簡素化される。